9人が本棚に入れています
本棚に追加
この地球には歴史が無い。
人類が歩んできた証となる物、過去の記録、それらは失われ、歴史を知る術も無い。
ある者は推測する。
古き時代のとある時、世界中の国々が、血で血を洗う凄惨な争いを起こした折、地球を滅ぼす程の兵器が使われた。
その結果、人類は激減し、生態系は崩れ,空は灰色に染まり、歴史という歴史は闇に消えた。
やがて生き残った僅かな人類は、また少しずつ歴史を刻み始める。
そんな中突如「エルシオン」という組織が現れ、世界を牛耳る。
エルシオンは、全ての人間の体に識別用ﾁｯﾌﾟを埋め込み、支配という形を以って世界をまとめ上げた。
それから程なくして、人類に不思議な現象が起き始める。
人類の「死」という概念が変化を見せる。
人類は生命活動が停止すると、その身は何事もなかったかのように消え失せるという現象に見舞われる。
ある者は神が人類を神の国に導いてくれると言い、ある者は地球が人類を地に帰ることさえ拒んだ結果だと言う。
どちらにしても今まで死という概念を失い、死することはただ消えるだけという感覚に、人類は他を殺すことに何の感情も抱かなくなり、世界は混沌としていく。
最初のコメントを投稿しよう！