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「武田さん、小さいオッサン見たことあります?」
安い大手居酒屋チェーン店で、これまたお得なクーポンを使って酒を飲むビンボーサラリーマンが2人。
片方は20代半ば。
「俺ね、見たことあるんです」
相当酔っ払っているせいか、言ってる事がヤバイ。
「ほほう、何処で見たんだ?」
それに付き合ってあげる優しい先輩が俺。
「大学の時に友達の家で酒飲んで寝てたんです。そんで、ふと目を冷ましたら……奴ら、コタツの上にさらに小さいコタツ置いて麻雀してました!」
「村井。それ、夢だよ」
「ちっがうんすよ、本当に見たんすよぉぉーー」
イタイタしい後輩をなだめすかして、終電に間に合うよう店を出た。
2月の夜は寒い。
「武田さぁん、どうせ暇でしょぉ。バレンタインは俺と一緒にいてぐだざぁいい」
「拒否」
村井は3年同棲してた彼女にフられたらしい。
ご覧の通り未練がましくて面倒臭い。
「村井、月報の提出明日までだぞー。また忘れると課長に嫌味言われるぞー」
適当に誤魔化しつつ、酔っ払いをタクシーに押し込んで、俺は電車で帰宅。
「そういや、俺も月報書いてないな」
見積もりも作ってない事を思い出して。
火曜の夜と言う、中途半端なタイミングで飲みに行った事を少し後悔する。
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