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部屋の入り口の引き戸は、前回話した妖怪がいる為、絶対に閉めている。
だけどそれを開けずに入って来ると言う事は…。
生きて無い人だ。
最初…、あまりにもハッキリ聞こえた音に『泥棒?』と思っていたのですが。
相手が『生きて無い』と分かり、さっきまでとは違う恐怖が噴き出して来る。
シュッ…、シュッ…。
その足音は私の背後で止まり。
私の様子を窺うように、膝を付いて後ろから覗き込んで来ました。
私の恐怖はピークへ。
怖い!怖い怖い怖い怖い!
怖い怖い怖い怖い怖い怖い!
怖い!怖い怖い……あれ?
何だろ…、怖く無い?
霧がスッ!と晴れるように、さっきまでの恐怖心が嘘のように消えたのです。
その瞬間…、私を覗き込んでいる相手の正体が分かりました。
あぁ……。
お爺ちゃんだ……。
生まれて初めてお盆に帰省をしなかった私の事を、どうやら祖父は心配して、様子を見に来たみたいなのです。
この日は送り盆。
きっと帰る途中に寄り道をして、私の所へ来てくれたんだと思います。
1分もしない内に気配は消え、家の中は何事も無かったように静かになりました。
布団から抜け出し、仏壇の前で手を合わせ。
「帰らなくてごめんね、心配してくれて有り難う。」
と言った後。
「でもね、お爺ちゃん。
今度からはあんな怖い出方しないでね!普通で良いから!普通で!」
と抗議する事も忘れませんでした。
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