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結局。
あれが何だったのか、本当に現実だったのかも分からないまま月日は流れ。
その事を思い出す事さえ少なくなった夏のある日。
その日も私は、何時ものように居酒屋のアルバイトを終え、夜の街に自転車を漕ぎ出した。
母校である中学校の横を抜け、川沿いの道に差し掛かった時。
「…あれ?」
前方の空に一際輝く赤い光。
「…もしかして…。」
あの謎の空飛ぶ物体に会った冬の日が、全身を駆け巡るようにフラッシュバックする。
ペダルを漕ぐ足に力を入れ、少しずつ速度を上げて行った。
「…っ、間違いない!」
近付いて来る赤い光、その輪郭がハッキリ見えた所で、私の体に力が入る。
今度こそ…。
前回の教訓を思い出し、空を気にしながらも前方を確認しながら自転車を走らせる。
キイッ!
しまった!
細い路地に入った所で、民家の屋根にそいつの姿が隠れてしまい、見えなくなってしまった。
空を気にしながら、民家の屋根が切れる所を探して移動。
屋根が切れて夜空が広がった時。
いた!!
私は自転車のスピードを上げて、ハンドルを左に傾けた。
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