第1夕刻

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昔から読んでる、漫画家さんや読者の体験談等を載せた『怖い話し』の漫画雑誌。 その日も私は買って来たばかりのその雑誌を読んでいた。 読み進めて行く内に、ある漫画家さんの体験談の1ページに動きが止まる。 「こ…、これ…。」 ベッドから跳ね起きるようにして、当時ルームシェアをしていた親友の居る隣の部屋へ転がり込んだ。 「ひーちゃん!! これ!!これ見て!!」 開いたままの雑誌を親友の目の前に突き出す。 あの家で有った出来事は、親友には殆ど話している。 勿論、『あれ』の事も話して有り、どんな奴なの?と聞かれて、絵を描いて見せた事も有った。 「あ! これって、前にMisatoが描いてくれたのとそっくりじゃん!!」 開かれたページを見るなり、釘付けになる親友。 その漫画家さんの体験談には、まさしく私があの家で毎日戦っていた『あいつ』がそっくりそのまま描かれていた。 赤黒い肌、四つん這い、白いふんどし、黒目の無い吊り上がった目、左右に裂けた口。 その漫画家さんの話しの中で、『あれ』は『妖怪』と紹介されている。 「妖怪…。」 「凄い、他にも見た人が居るんだ。」 まさかの再会に戸惑いが隠せない、だが私の中では『妖怪』よりも、あえて言うなら『物の怪』と言う方がしっくり来る。 引っ越した後は1度もあの家には近付いて無い。 もしかしたら、あの家には今も『あれ』やその他のモノ達がまだ住んでいるのかも知れない。
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