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線香の香りと月明かりだけが揺れる小さな部屋。
銀髪をふよふよとさせるその客は、キセルをカンッ…と鳴らし遊女を見る。
「おめぇは、いつまでたっても花魁にはなれねぇな」
そんな男の言葉に、しかし遊女は気にした風でもなく返す。
「あんただけが見てくれれば、それだけで充分だよ」
「よく言う」
男は小さく笑ってそういうと、線香の残りをみて立ち上がった。
「また会えたらいいな」
だから遊女は言う。
「あんたは必ずここにくるよ、今までみたいに、必ずね」
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