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「悪い……ヘヘ、感情が先走っちまった。サンキュ、唱詩」
「だけどどうする? 僕らだけでA2地点に先行する?」
「ああ。お前も来てくれた事だしな。それにこいつ殺した事で移動される可能性もあるし、俺らは特攻隊長だろ?」
「特攻するんなら、菜衣智に声掛けなくていいの? あの子は本当に君を心配しているんだよ」
「いいのいいの。そんな事しちまったら死ぬのが怖くなっちまうだろ?」
「……分かった。君は僕が守る」
屈伸している唱詩の頭のポンポンと叩きながら大介は富士の樹海を飛んでいく。唱詩もムッとしながら忍者のように木の枝を転々とする。
「君が着てからもう2年と半年なんだね」
「なんだぁそれ。言うなら3年たった頃にしろってんだよ」
「おかげ十字軍も楽しいんだよ。最近ね」
「昇天蝶様の台詞とは思えないぜ。いいのか? そんな戦いにそぐわない態度で」
「けじめけじめ。友達の前では友達の顔。敵の前では敵の顔」
「なんだぁそれ。大体俺はお前の2歳年上で、先輩と呼ばれる様な年齢なんですけどー」
「それ言うんなら十字軍暦は僕のほうが長いんだからね」
「なんだぁそれ。俺の方が裏にいた暦長いんだっつの」
不意に大介は唱詩から目を逸らした。
「なんせ俺はクリエイターが物心ついた時から住処だったからな」
「月詠境界……協会?」
「どっちも正しい。まあそんな境界線の境界の中で宗教的に育てられて世間様から見て普通だったのは俺と架音だけだったからな」
「他の月詠は?」
「他に兄や姉が六人はいた筈だけど……架音の存在で皆滅茶苦茶に殺されて、“教主の一部”になった。母さんもな」
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