新月

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「……」  ここでの生活も二日目に至る。その二日間をシャワーを浴びながら架音は回想する。  昨日の朝、十字軍の追っ手を撒く為に林の中に入り暫くしたところで、唱詩が突然倒れ、熱を発しながら意識を朦朧とさせ呼吸もおかしかったのだ。そこで丁度近くにあった不自然な小屋に入ると、何故か地下に延々つづく階段を見つけ、追っ手から隠れる意味もあって架音は唱詩を抱きかかえたまま中に入ることを選択した。  そして謎の声がした。最初はそれを疑いはしたが、唱詩の容態が悪くなる様を見ていられずに声に従い、注射までして――徐々に回復していた。  昨日の夜になり、天成日向という名前と上記の経歴と、多少の雑談をした。  そして今朝。今。  体を洗い終わり、肌に纏わり付く泡を全て流してバスルームを出てタオルで体を拭き、部屋にあった衣服を身につけ唱詩の様子を見る。(天成に裸でいると唱詩が死ぬと言われたので気をつけている)  今はただ、眠っているだけのように見える。苦しみが薬で大分引いたらしい。  それに改めて安堵するのと同時にこれまでの自責の念がここで爆発しそうだった。  “かぐや姫”。  それが架音の記憶を失う前の位置であり、唱詩の敵だった。その記憶自体は戻っていないが、クリエイター0と1番席に両方居座っておりその忠誠心はクリエイターの中でも一番を誇っていた。  クリエイター。  革命と雲の背キャンパスの革命前哨戦を起こし、数多の罪も無い一般人を死と混沌に陥れた宗教組織。  架音は。  かぐや姫は。  クリエイターに最も忠実な少女だった。 「心配かね? 常盤君の事が」
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