一夜 くろぅばぁりぃふ

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店に入って来たのは、白絹に花柄のワンピースを着て、お釜帽を被った若い娘だった。その姿は、昭和初期のモダンガールそのものである。娘は不安そうにしながら、 「あんまり霧が濃くって、お店のネオンに誘われて。」 そう言うと、ちょっと首をすくめて見せた。 「いらっしゃいませ。」 女が言うと同時に、男が立ち上がって叫んだ。 「き、君は…まさか!」 娘のキョトンとした顔を見て、男は我に帰り腰を下ろして呟いた。 「そんな筈はないな。」
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