吐息に乗せた想い

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屋上でただどうすればいいのかわからなく 意味もなく涙を流していると 突然彼が現れた。 その表情は決して明るくなく、 暗く重い表情をしていた。 そして、思ってもいない言葉を贈りつけられた 『俺は峰倉が好きだ』 耳を疑った。 どういうことだと 私はずっと一方的な想いだとばかり思っていた 彼にそんな想いが届くはずがないと思っていた そして、何よりも今日の倉田君の発言により 私は嫌われたとばかり思っていた なのに、なのに・・・ 彼は私を好きだといい そして何故私は今彼の腕の中にいるのだろうか 「ぇ・・・」 「ごめん。俺の所為で泣かせている・・・」 泣かせている? もうずっと泣いていた所為で 自分が今泣いているなんて気づきもしなかった 暖かい彼の温もりと彼の匂いに 心臓が激しく鳴り響くのに 気持ちはどうしようもなく安心する。 「・・・好き」 「え?」 無意識だった 「好き・・・好き、好き・・・ 私も、下田君が・・・好き」 ただ自然と漏れ出した言葉。 一度決壊すると止まることのない川のように 次々と溢れ出す、届くことのなかったはずの想い 彼の腕が一層強まる。 「ありがとうっ・・・」 嬉しい嬉しい嬉しい もう寒さなんて感じることはない、 だって、彼が私の隣にいるのだから。 好きになるということが こんなにも切なくて苦しくて辛いことだったなんて知らなかった だけど 好きという感情が こんなにも暖かくて、甘くて、愛おしいことだったんて初めて知った もう彼の小さくなっていく背中を見ることはない。 今はもう彼の隣で彼の笑顔を正面で見つめることができる 『好き』という言葉は『幸せ』になる1歩。 私はまだその1歩を踏み出したばかりだ・・・ ―――――END―――――
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