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ぼくの歩いた跡に、涙が落ちている。
微かな染みを残したそれは、時間が経てば跡形もなく消え去るのだろう。
それは泣きたいくらい喜ばしいことで、笑いたいくらい悲しいこと。
この涙はまるで、ぼくだ。
自身に儚いというような表現をするつもりはない。
そうではなくて。
僅かな染みを残したところで、すぐに消え去る。遺ることを赦されていないのだと、それは語っているようだ。
ぼくはもうすぐ、死ぬだろう。
そのことは、ぼくの本望ではない。単なる病気だ。
遺らない涙は、まるで自分。
だって、ぼくも遺らないだろうから。
お母さんもお父さんも、ぼくが嫌いだから。ぼくは、要らない子だったから。
ほら、きっと何も遺らない。
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