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だけど、
『湊っ』
にへら、と緩んだ笑みを浮かべるのは誰だったか。
これは、幼い頃の記憶。
ただただ、幼く無垢で、何も知らなかった時の、優しい友人。
『ほら、笑えよー』
別れの時でさえ、にへら、とした笑みを崩さなかった。
でも、ぼくは知ってる。
彼の目尻に、涙が溜まっていたことを。
彼を思うと、自然に頬が緩む。
『……また、な?』
そんな約束をしたけれど。
ごめんね、守れそうにないや。
「………ッ、…ゴホッ……!!」
誰にも知られず、思い出だけを抱いて眠りたい。
たった、ひとりで。
『歩いてみようよ』
ああ、そうだったね。
外を知らなかったぼくに、君が教えてくれたんだった。
……ありがとう、優しい友人。
またいつか、逢えたら良いな。
そうは、思わないか?
▼END▲
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