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「晋ちゃん、ほら」
いつもの胡散臭い笑みを浮かべて、ソイツは俺の服を脱がしにかかった。
「自分で脱ぐ。……どけ」
「ったく。仕方ないなぁ」
小さく笑ってどいたソイツを認めて、俺は制服のボタンを外し始めた。
……薬品臭い保健室。嫌いだけど、ここにいる保健医の従兄弟に頼らないといけない俺。
自分の体は脆い。
俺は、ちゃんと理解している。
この体が、そう長く持たないことを、俺は知っている。きっと、この従兄弟も。
縋りたいとは、思わない。
目障りだとも、思わない。
この従兄弟は、優しい奴なんだと思う。そして、聡い。
心細い時やそばにいてほしい時、コイツはいつも近くにいる。
俺の感情の揺れを的確に図って、話す時と、ただ静かにそばにいる時を使い分けてくれる。
何故そんなにも、俺のことを気にかけてくれるのかは分からないが。
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