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肉まんを離さず、視線だけ声のした方へ向ける。
視線の先にいたのは、眼鏡をかけた渋い中年男性。
白髪とも銀髪ともとれる鈍色の髪と顎髭を生やし、眼鏡の奥に宿る眼差しはどこまでも穏やかだ。
この男はタカミチ・T・高畑。
ネギとかいう餓鬼が菲の担任になる前の担任で、広域指導員とか何とかいう役職を兼任しているためか、よく見廻りをしている男だ。
不良の間ではデスメガネと呼ばれているらしい。
正直な話、好きでも嫌いでもないどうでもいい男だが、如何せん菲と会う前からこの男とは面識がある。
そのため、無下に追い払う事も出来ないのだ。
そう思いながらも、もう一口。
いや、熱い物は熱い内に食べなきゃね。
ほら、失礼だから。食べ物に。
そう言い訳しながら口の中をハフハフさせていると、噂のネギが喧騒から離れるかのように此方へ近寄ってきた。
「やあネギ君。
初日の授業お疲れさまだったね」
おいこらタカミチ。
何勝手に話しかけてんだ。
「あ、
タカミチとしずな先生まで――」
ほら見ろ、椅子に座ったり何かして居座る気マンマンじゃないか。
……て言うか、しずな先生。
あんた居たんだな。
喋らないから空気になってたぞ。
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