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「あ,和枝,パン焼けたよ。ご飯にしよっか。」
そう言いながら一男は昼飯の準備を始める。
オーブンからパンを取り出しつつ和枝の小皿,牛乳をグラスに注ぐ。
その間和枝は自分の椅子に座り,差し出される出来立てのパンを眺め待っている。
「いただきまーす。」
二人声を揃え黙々と昼食を摂る。
「和枝,パン大好きー。ねーパパー。」
「そうだねー。」
「うん。和枝とってもパン大好き。」
「うん。」
以前なら和枝の話に乗ってたはずなのに,一男はそっけない返事で済ませる。
それでも和枝は気にせず一男に話し掛ける。
「熱いから気をつけて食べなさい。」
「フーフーして食べなさい。」
こんな言葉しか掛けてやれない。
一男がコーヒーを淹れる準備をした時,不意に和枝が
「ねー,パパおこりんぼなの?」と。
ドキッとするも平静を装いながらコーヒーを淹れる。
「そんなことないよ。」
「でもパパおこりんぼじゃん。ママ言ってたよ。」
「和枝が良い子ならパパ怒る必要ないし。悪い事したらパパ怒るでしょ?」
そう言うのが精一杯だった。
ここ数日の態度は確かに度を越してると自分でもよくわかる。
仕事や喧嘩の鬱憤を和子や和枝にぶつけてるのは明らかだった。
子供にそう言われた事,そう言わせた自分が何とも言えない感覚になりながらも
「パン食べなさい。」
そう言い話題を切り替えた。
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