2月

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「あ,和枝,パン焼けたよ。ご飯にしよっか。」 そう言いながら一男は昼飯の準備を始める。 オーブンからパンを取り出しつつ和枝の小皿,牛乳をグラスに注ぐ。 その間和枝は自分の椅子に座り,差し出される出来立てのパンを眺め待っている。 「いただきまーす。」 二人声を揃え黙々と昼食を摂る。 「和枝,パン大好きー。ねーパパー。」 「そうだねー。」 「うん。和枝とってもパン大好き。」 「うん。」 以前なら和枝の話に乗ってたはずなのに,一男はそっけない返事で済ませる。 それでも和枝は気にせず一男に話し掛ける。 「熱いから気をつけて食べなさい。」 「フーフーして食べなさい。」 こんな言葉しか掛けてやれない。 一男がコーヒーを淹れる準備をした時,不意に和枝が 「ねー,パパおこりんぼなの?」と。 ドキッとするも平静を装いながらコーヒーを淹れる。 「そんなことないよ。」 「でもパパおこりんぼじゃん。ママ言ってたよ。」 「和枝が良い子ならパパ怒る必要ないし。悪い事したらパパ怒るでしょ?」 そう言うのが精一杯だった。 ここ数日の態度は確かに度を越してると自分でもよくわかる。 仕事や喧嘩の鬱憤を和子や和枝にぶつけてるのは明らかだった。 子供にそう言われた事,そう言わせた自分が何とも言えない感覚になりながらも 「パン食べなさい。」 そう言い話題を切り替えた。
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