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後ろを見ると、守衛と同じコスチュームを着た優しそうなおじさんが一人。
「あ、あの、人と会う約束をしているんですけど、なんだか入りにくくて……」
彼は、再び暖かい微笑みを私に投げかけると、手でドアをさした。
「フロントまでご案内します」
このおじさんは、私の父と同じくらいの年だ。
五十歳前後。
一瞬、恋に落ちた。
「こちらへどうぞ」
おじさんに先導されてホテルの中へ入ると、ロビーはゲストの活気にあふれていた。
騒がしいのではない。
誰もが笑顔で、これから始まる彼らの旅と滞在に期待を寄せている。
現実に対応するのが精いっぱいだった私には久しぶりの空気。
慣れるのに少々時間がかかったが、居心地の悪いものではない。
大きく、広々としたロビーは白い大理石で統一され、五階まで天井が吹き抜けになっている。
窓から入ってくる日の光が、ロビー全体を明るくしていた。
証明はそれほど多くなく、淡いオレンジ色の明かりがロビーの気品を出している。
大きな柱に支えられた天井には、表現できないほど大きなシャンデリアが吊られている。
カフェラウンジでは、バイオリンとピアノが生演奏をしている所だった。
入り口から入って左奥に、フロントが位置している。
過ぎ去る人々の半分以上が英語で会話をし、その中のほとんどの人々の持ち物がブランド品。
圧倒的に黒めの服を着た人が多い。
これが、上流階級ってやつらしい。
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