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男性の方は中年で、胸には金色のプレートがついている。
そこにかいてあったのは、マネージャー、の文字。
「大変お待たせいたしました。
マネージャーの立川と申します。
お部屋までご案内させていただきますので、こちらへどうぞ」
背筋をぴんと伸ばし、すれ違うゲストに丁寧にあいさつをしながら歩く立川さんの後を私がついていく。
立川が向かったのは、大半のゲストが使用するエレベーターではなかった。
「ここから先は、VIPエリアです。
チャットウィン様のお部屋には、この中にあるエレベーターからしか行けません」
白い大理石の壁の間に、大きなガラスの両開きドアがある。
その前には、体格のいい制服姿の従業員が立って、その入り口を守っていた。
いくら笑顔を浮かべていても、そこから先に進める勇気は大抵出ないだろう。
ドアが開けられ、その先に足を踏み入れる。
ロビーの活気にあふれた空気が一気に変わる。
人々の話声は一瞬で消え去り、流れてくるクラシックの音楽が耳に心地いい。
横二メートル幅ほどの廊下には赤いふかふかの絨毯。
一メートルごとに飾られた絵画は金縁の額に飾られている。
おそらく有名な画家の絵なのだろうが、私は絵が全く理解できない。
その中でも一番理解できない、小学生が描いたようなハチャメチャな絵が目に留まる。
きっとピカソだ。
居心地が悪くなるような豪華な廊下の先に、木製扉のエレベーターが三つ。
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