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息を切らしながら、玄関に着くと、私はさっき脱いだばかりの靴に履き変えた。まだ生暖かい。
そして――……私は会ってしまった。いや正確に言えば、見られてしまった、だね。
『春乃 美穂ぉー! てめぇ、なんで靴履いてんだぁ!』
この聞くだけでだるい声。
体育教師の鬼壁 桐也(オニカベ トウヤ)だ。バカだ。
苗字と名前の頭文字をとって「鬼桐」。生徒はみな“おにぎり”と呼ぶ。
趣味は『ギャンブル』、性格は『自己中心的でありながらおせっかい』。言っとくが担任ではない。私は二年だから、個性豊かな先輩達の担任はコイツだけど――ってそんなこと考えてる場合じゃない!
「……最悪」
そう呟くと、私はすぐに走り出した。もちろん後ろから、竹刀を握ったおにぎりが走って来ていた。
……今どき竹刀を持ち歩く先生って、どんだけ。
「待てや、コラぁ!」
……待つわけないじゃんばか。そんなこと叫ぶより、真剣に追い掛ければいいのに。
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