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《辻 ひなたの視点》
眠りから覚めると、ベッドの上ではなく肌触りのいいカーペットの上に寝ていた。
(やだ、私ったら……ベッドから落ちたかしら?)
そう思ったが、自分の部屋に敷いているカーペットの触り心地と全く違うことに気づき、すぐに体を起こす。
「……ここは……」
見慣れない広い部屋だ。
「大丈夫?僕も今起きたばっかり。」
背後から突然若い男の子の声がして、ドキッとして振り返る。しかし、自分の周りに人が多数眠っていることに気づいてさらに驚く。
「この人たちは……」
「わからないけど集団誘拐かもしれないね。僕たち閉じ込められてるみたいだし。このドア、開かないんだ。」
彼はそう言って手を開いたり閉じたりしている。よく見ると扉には肝心の取っ手がない。
「えっ……そんな……」
私は驚いたが、ふと思い立って後ろを振り返った。
立ち上がって窓に近づき、レースのカーテン越しに外を覗いて愕然とする。
「格子が……」
「窓からも逃げられない、か。」
察しがいいのか男の子はそう言った。
「ええ……でも他にも出入りできるところがないか探しましょう。」
私がそう言うと彼は少し微笑みながら頷いて、さっそく壁を調べ始めた。
私はとりあえず部屋をぐるりと見渡してから、暗い部屋に光を取り込もうとカーテンを掴んだ。しかし、どういう構造になっているのか全く動かない。
(あれ?なんで?開かない……)
機械式にでもなっているのか、カーテンは固定されたまま開けることも閉めることもできなかった。
仕方なくレースのカーテンを下から捲り上げてカーテンの中に潜り込む。
窓は電車で見かけるような上げ下げ式になっていた。両手で下窓の窓枠を掴み、上に引き上げる。鍵はかかっていなかった。
外は木々が生い茂っていて空気が澄んでいるようだ。私は軽く深呼吸した。
念のため格子がはずれるかどうか色々と試してみる。が、それも徒労に終わる。
続いて私は大きな暖炉に近づいた。
暗くてよく分からないが、人が入れないことはなさそうだ。
だが、煙突が外まで続いているかどうかは入ってみないとわからなかった。
中の薪を掻き分けようと火掻き棒を掴んだその時、その傍に何か落ちていることに気がついた。
(なんだろう……?)
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