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しゃがみ込んで拾い上げると、それはお座りをした猫の形の金属片だった。
やけに長く、頭の部分を押すと奇妙に上下する。
(うーん……なんかのオブジェかな?)
「あ、あの……」
後ろの方でさっきとは別の男の子の声がして、私は振り向いた。
「ここ……どこなんだろうね?」
さっきの男の子が唐突に言う。
「え?」
戸惑うのは当たり前だ。私は黙って二人のやり取りを聞くことにした。
「どうやら僕たち、誰かに連れ去られてきたみたいだよ。」
さっきの男の子がそう言ったので、声をかけた方の男の子は呆気に取られたように黙っていた。
ずっと見ているとその男の子と目が合った。私は無言でゆっくりと頷いた。
その後、二人は例の開かない扉に近づいて行く。取っ手のことを話すつもりなんだろう。
私は一瞬何か頭に引っ掛かるものを感じた。だが、それがわかるのはもう少しあとになってからのことだった。
タイミングを見計らって私も会話に加わる。
「窓の方は鉄格子が張られてるみたいで出られないですよ。」
二人が振り向く。
「さっきカーテンを開けようと思ったんですけど、これ、どうやっても開かないんです。機械仕掛けなのかしら……」
私は独り言のように呟いた。
「どこかにスイッチがあるかもしれないっすね。学校の視聴覚室みたいに。」
男の子はそう言って近づいてきた。が、何かに驚いて立ち止まる。
どうやら私たち以外にも人がいたことに今初めて気がついたようだ。
彼が最初に立っていたのは部屋の隅だったので、もしかしたら見えていなかったのかもしれない。
彼は人差し指で寝ている者の人数を数え始め、床に座っている中年の男性、それから私ともう一人の男の子、そして最後に自分を指差して数えるのを終えた。
私は部屋を見渡した時にすでに人数を確かめていた。性格上そういう確認は怠らない。
「他のみんなも起こした方がいいかしら……」
私はまた独り言のように呟いた。
「そうだね、何か知っている人間がこの中にいるかもしれない。」
腕組みしながら答えたのは最初に起きた男の子だ。
「そうっすね……じゃあ起こした方がいいかも。」
続けてさっき起きた男の子が言った。
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