15人が本棚に入れています
本棚に追加
私は寝ている人間の傍らにしゃがみこみ、普段と同じように声をかけて起こそうとする。
ただ、いつもと違って髪を束ねていないので、邪魔な横髪を耳に掻き上げてから眠っている者の肩をトントンと叩いた。
「大丈夫ですか?起きてください。」
そう声をかけながら次々と起こしていく。起こされた者は皆すぐに立ち上がろうとはせず、頭を押さえたり、だるそうにしている。
そうこうしているうちに一人の男性がようやく口を開いた。
「……雫、なんで俺達こんな所で寝てんだ?てか、ここ、どこだ?」
(えっ、知り合い?!)
皆の視線が二人に注がれる。恋人同士なのかしら、と私は咄嗟に思った。
「うぅ……ん……わかんない……あ、あのー、皆さんは……?」
尋ねる彼女の表情はとても不安げだった。
その時突然、窓際のカーテンが低い音を立てて開き出した。
「暖炉の横にあったよ、スイッチ。」
そう言ったのは最初に話し掛けてきた男の子だ。カーテンが全て開き終え、ようやく部屋全体に日差しが差し込む。
それにあわせるかのようにいつの間にか床からソファーに座り直していた中年男性が話し出した。
「皆さん、明るくなったことですし、まずは落ち着いて座りませんか?この部屋からは出られないようですし。」
ソファーはちょうど12脚あった。これが一体何を意味するのかは分からなかったが、少年が言うように誘拐だとしたら扱いがよすぎやしないかと私は思った。実際誰も縛られたりしていないし、こうして自由に動き回れる。目的はわからないが、私たちをここに連れてきた犯人はそんなに悪い人達ではないのかもしれない。
私は、さっきの二人の男女がなんとなく気になって同じテーブルに座った。
「私は飛田龍之介と言います。理由はわからないが、我々はどうやら何者かによってここに閉じ込められたようですね。しかし今のところ見張りなどはいないようです。まずは落ち着いてここから出る方法を考えましょう。もし体調が悪い方や気分がすぐれない方がいらっしゃればすぐに教えて下さい。私は医者です。……恐らく、……いや、私も、ですが……睡眠薬を飲まされて眠らされていたと思うんです。」
『睡眠薬』という言葉には驚かざるを得なかったが、この中に自分と同じ医療関係者がいたということに私は正直ホッとしていた。
「睡眠薬って……!一体誰に?!」
最初のコメントを投稿しよう!