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《乾 賢太の視点》
「うぅ……ん……?」
目覚めたのはまったく知らない部屋の中だった。古い洋館のような造りで、高い天井からは大きなシャンデリアが大小合わせて三つ吊されている。
手を動かしてみると、柔らかく毛足の長い絨毯の上に寝かされていることに気づく。
部屋の中は照明がついていないため薄暗く、窓のカーテンも一箇所を除いて締め切られている。
その窓から差し込む光が唯一の光源だったが、中途半端に開かれたカーテンとレースのカーテンも掛けられていたため、この広すぎる部屋の中を照らすには不十分だった。
けだるい体を起こしてよく見ると、部屋には他にも何人か人がいることに気づく。
ギョッとして様子を伺うと、それぞれ暖炉の前をうろついたり、壁際に置いてある装飾品に触ったり、絨毯に座ったまま辺りをキョロキョロしている者もいる。自分と同じで目が覚めたばかりなのだろうか。
どうやら自分に危害を加えそうな気配はない。まだけだるさの残る足で俺はゆっくりと立ち上がった。
「あ、あの……」
一番近くにいた猫の置き物に触っていた人物に声をかける。
「ここ……どこなんだろうね?」
振り返った少年の口から出たのは、今まさに自分が質問しようとした言葉だった。
「え?」
驚いて何も言えないでいると、彼は続けて話し出す。
「どうやら僕たち、誰かに連れ去られてきたみたいだよ。」
そんなことを冷静に言う彼に面食らう。声と見た目からすると、歳は俺とそんなに変わらないだろう。
暖炉の前にいた女性がこちらを見ていて、目が合うと深刻そうな表情で頷いた。
まだ多少はっきりしない頭で考える。何者かにここに連れて来られたというのは確かに彼の言うとおりだろう。
昨日の夜、寝ようとして自分の部屋の布団に入ったところまでは覚えているので、その後眠っている間に運ばれたに違いない。
しかし、家族の誰にも気づかれずにそんなことができるだろうか。それに、そのことに全く気がつかないまま寝ていたというのも腑に落ちない。
とにかくここはどこなのか、誰の意図によってここに連れて来られたのか、はっきりさせなければ――
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