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ふと、この部屋の入口の扉に目が行く。重厚感のあるその扉に近づいてみると、すぐにおかしなことに気づく。
「開かないよ。取っ手がなくってさ。さっき押してみたんだけど全く動かないしね。こっち側に引っ張ることは無理っぽいよね。」
さっきの少年が近づいて来て言った。
どうやら彼は他人の思ったことを【先読み】するのが得意らしい。そういう性格は嫌いではなかった。
「窓の方は鉄格子が張られてるみたいで出られないですよ。」
暖炉の前にいた女性が話し掛けてきた。
落ち着きのある声から自分たちより少し年上な感じがする。
「さっきカーテンを開けようと思ったんですけど、これ、どうやっても開かないんです。機械仕掛けなのかしら……」
最後の方は呟きに近かった。
「どこかにスイッチがあるかもしれないっすね。学校の視聴覚室みたいに。」
俺はそう言って、窓を調べようと歩き出した。
部屋の真ん中まで来た時、まだ眠っていた人間が何人もいたことに初めて気づく。
この部屋の薄暗さと家具の死角になっていたので気がつかなかったのだ。
人差し指で順々に数えていくと、部屋の中にいるのは全員で12人だった。
この人数をここに運ぶのはかなり骨が折れたことだろう。
一体犯人は何人いるのだろうか。目的もまだわからない。
得体の知れない犯人の姿を想像して、俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
「他のみんなも起こした方がいいかしら……」
女性が静かに言う。
「そうだね、何か知っている人間がこの中にいるかもしれない。」
【先読みくん】が答える。
「そうっすね……じゃあ起こした方がいいかも。」
俺も焦って賛同する。
女性は早速寝ている人間の傍らにしゃがみこみ、長い髪を指で耳に掻き上げながら眠っている者の肩を揺すり、声をかけて起こそうとする。
俺たちも片っ端から起こしにかかる。
さっき床に座っていた中年の男性は、俺たちの会話を聞いて事態を把握したのか、ソファーにゆっくりと腰を掛け頭を抱えていた。
いつの間にか銀縁の眼鏡を掛けている。
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