プロローグ ~覚醒~

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 全員を起こし終え、会話ができる状態になるまでしばし待つ。  そのうちに、一人の男性が話し出した。 「……雫、なんで俺達こんな所で寝てんだ?てか、ここどこだ?」  どうやら知り合いがこの中にいたようだ。お互いが知らない者同士だとばかり思っていたので、全員の視線が一斉に二人に向けられた。 「うぅ……ん……わかんない……あ、あのー、皆さんは……?」  女性は知り合いらしい男性に反応した直後、見知らぬ複数の人間が自分たちを見ていることに気づき、不安げに尋ねた。  その時、窓際のカーテンが一斉に開きだした。  ジジーという映写機がフィルムを巻き取るような低い音が部屋中にゆっくりと鳴り響き、皆が窓の方に注目する。 「暖炉の横にあったよ、スイッチ。」  どうやら【先読みくん】がカーテンを開けるスイッチを見つけたらしい。  六つある窓のカーテンが全て開き終わると、部屋は見違えるほど明るくなった。 「皆さん、明るくなったことですし、まずは落ち着いて座りませんか?この部屋からは出られないようですし。」  ソファーに腰掛けた眼鏡の中年男性が言う。  部屋の真ん中にはテーブルが三つあり、座り心地の良さそうなゴブラン織りのソファーが各テーブルに四つずつ配置されていた。  まるで俺達12人に用意されたかのようだ。  皆不安げな表情ではあったが、同意したのか次々とソファーに着席していく。  俺はなんとなく【先読みくん】の隣に座った。  全員座り終えたのを見計らって、眼鏡の男性が立ち上がって話し出す。 「私は飛田龍之介と言います。理由はわからないが、我々はどうやら何者かによってここに閉じ込められたようですね。しかし今のところ見張りなどはいないようです。まずは落ち着いてここから出る方法を考えましょう。もし体調が悪い方や気分がすぐれない方がいらっしゃればすぐに教えて下さい。私は医者です。……恐らく、……いや、私も、ですが……睡眠薬を飲まされて眠らされていたと思うんです。」  全員が一斉に驚きの表情になる。 「睡眠薬って……!一体誰に?!」  がたいのいい男性が声を荒げる。 「それは……分かりませんが……」  飛田が言葉に詰まる。しかし、睡眠薬を飲まされたということについては納得せざるを得ないだろう。家族はともかく、俺自身にも全く気づかれないでここに連れてくること事態、相当難しいと思ったからだ。
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