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僕は壁を手の平で触りながら歩きだした。忍者屋敷みたいなカラクリがあるかもしれない。
たまにゴンゴンと叩いて壁の内側が空洞になっていないかどうか確かめてみる。
それにしても暗い。探し物をするには少々不便すぎる。お姉さんの方を見ると、どうやらカーテンを開けるのに苦戦しているらしかった。
僕も壁に照明のスイッチらしきものを見つけて押してみたが、まったく反応がない。ブレーカーが落ちているのだろうか。
諦めてまた壁を調べていると、部屋の角にたどり着いた。
そこには脚の長い木製のミニテーブルがあり、上に高さが約20センチくらいの白い猫の置き物が飾られている。触ってみるとヒヤリとして冷たく、持ち上げて見ると結構重たい。
(陶器でできてるのかな……)
そう考えていた時、後ろで人が立ち上がる動作音がした。
「あ、あの……」
「ここ……どこなんだろうね?」
話し掛けてきた若い男に、振り向きざま質問で返してみる。
「え……?」
彼の反応から、やはり自分たちと同じように訳も分からずここに連れて来られたのだと推測する。
「どうやら僕たち、誰かに連れ去られてきたみたいだよ。」
僕がそう言うと、彼と彼の傍にいた起きたばかりの中年の男性が驚きの表情になる。
若い男の方は何か少し考え込んでから、ドアの方を見て近づいて行った。
「開かないよ。取っ手がなくってさ。さっき押してみたんだけど全く動かないしね。こっち側に引っ張ることは無理っぽいよね。」
僕も彼について行き、さっき自分が調べて分かっていることを告げた。
振り返った彼の顔にちょうどレースのカーテンから差し込む光が当たる。見た目からするとおそらく自分と同い年くらいだろう。
「窓の方は鉄格子が張られてるみたいで出られないですよ。」
さっきのお姉さんが続けて報告する。
「さっきカーテンを開けようと思ったんですけど、これ、どうやっても開かないんです。機械仕掛けなのかしら……」
お姉さんが呟いた。だとすると、あのカーテンは何故中途半端に開いてるのだろう。あとでちょっと調べてみるか――
「どこかにスイッチがあるかもしれないっすね。学校の視聴覚室みたいに。」
彼がそう言って歩きだす。が、何かに気づいて立ち止まり、床を見渡している。
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