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「私は飛田龍之介と言います。理由はわからないが、我々はどうやら何者かによってここに閉じ込められたようですね。しかし今のところ見張りなどはいないようです。まずは落ち着いてここから出る方法を考えましょう。もし体調が悪い方や気分がすぐれない方がいらっしゃればすぐに教えて下さい。私は医者です。……恐らく、……いや、私も、ですが……睡眠薬を飲まされて眠らされていたと思うんです。」
『睡眠薬』という言葉に全員が動揺する。
「睡眠薬って……!一体誰に?!」
興奮した男性がテーブルを叩きながら言う。
「それは……分かりませんが……」
そう問い詰められ、飛田は黙ってしまった。犯人がわかれば苦労はしない。もしかしたら家族がやった可能性だってあるのだ。
「あの、私……具合が少し……」
ふいに飛田の隣に座った【彼女】がそう言った。
「そうですね……一応全員診察したほうがいいでしょう。皆さんは座っていてください。私が回りますので。」
飛田は立ち上がって診察に回った。僕は飛田の質問に何回か「大丈夫です」と答える。
しばらくして飛田は、元いた場所に戻った。
「多少ふらつきが残っている方もいらっしゃるんですが、しばらくすれば治まると思います。……ところで、皆さん初対面同士だとばかり思ったのですが、お二人はお知り合いだったんですか?」
そういえばさっき知り合いらしき二人が話していたなと僕は思い出した。
「あ、あの、私たち、……兄弟なんです。」
女性がどぎまぎして答える。気のせいか、一瞬何か妙な間があったような気がした。
「こいつが妹の雫で、俺が兄の誠です。工藤誠。二人とも大学三年生です。」
男性が答える。飛田が【双子】と言った時、僕は妹の雫の表情がとても引っ掛かった。飛田は続けて話す。
「名前が分からないと不便なので、他の皆さんも簡単に自己紹介してもらっていいですか?」
「……じゃあ僕から。猪野翔真です。高二です。」
僕は一番に立ち上がり、簡単に挨拶をして隣をちらりと見てから座る。例の歳が近そうな彼だ。暗黙の了解で彼は会釈しながら立ち上がった。
「乾賢太です。同じく高校二年生です、よろしく。」
彼は最初に予想した通り同い年だったらしく、僕は親近感が湧いた。
その後、自己紹介は続き、とうとう【彼女】の番になった。
僕が一生を賭けて償わなければならない、大切な初恋の相手だ――
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