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「何、笑ってんだよ。」
急に笑いだした俺の胸ぐらを掴む冬也。
俯いたまま、俺は言う。
「………いいえ~、こんな私に大層構うんですね。そんなにお暇なんですか、如月財閥次男の冬也さんは。ああ、父親に期待されなくてグレてるおつもりです?それとも兄しか見ない母親への当て付け?しかし、残念ですね。貴方はとうの昔に、両親に見限れられていますよ?それに気付いていないのは、滑稽そのもので…笑いしか浮かびませんね。」
「な…何、を…デタらめ」
畳み掛けるように言葉を紡ぐ。
周りに話していない自分の情報を、見知ぬ他人に言われれば脅威と感じるのは当然。
顔面蒼白となった冬也に向かい、笑顔を見せる。
頭の中が冷たい感情で満たされていく。
言葉が止まらない。
「今一番したい事は、私をどうにかするのではなく…陥れる事、ですよね?」
「…………何を…言って…。」
「私は知っていますよ?………蹴落としたいのでしょう、清廉潔白……姫宮 一のお気に入りを。」
悪魔の囁きに、冬也の喉がなる。
変貌した俺を恐れてか、拘束は解かれていた。
落ちている眼鏡を拾いあげ、手で口元を拭うと血がついた。
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