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痛々しい程、張りつめた空気に俺は終焉を見いだす。
「………………ふぅ。」
沈黙の中で、ため息を漏らせば周りに動揺が走った。
「嘘、ですよ。」
取って付けたように笑顔で煙に巻く。
疑心暗鬼に捕らわれ、俺を凝視する冬也には、外からの足音は聞こえていない。
「ただの当てずっぽうです。深く考えないで下さいよ。…そんなに気になるようでしたら、ご両親と一度しっかり話をしてみては?」
カウンターに入り、備え付けの水道で口をすすぎ、ナイロン袋に氷と水を入れ、簡易的な氷嚢を作る。
「それと………私が一姫と関わるのがそんなにお嫌なら」
一度言葉を句切り、彼らの後方にある扉を見る。
頬に走る傷み、口をゆすいでも取れない血の味。
無理に拘束され、痛む肩や腕。
それら全てに嫌気がさす。
開く扉に向かい、言葉を吐く。
「マスター、私はここから消えさせて頂きます。もう……゙color゙ど四季゙に関わりたくありません。」
その日、゙color゙の彼等に別れを言わないまま、『bar.モザイク』からアイは消えた。
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