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静かに俺達を見ていた勇さんにも、一口分を差し出した。
「勇さんもどうぞ。」
笑みを浮かべ勧めてみたが、考えてみれば普通こんな事しないのかもしれない。
マスターと誠一郎さんがよく俺にするせいか毒された。
思わず、手を引こうとすれば勇さんが食べてくれた。
「美味しいね、有難う。」
魅力的な笑みを浮かべる勇さん、こんな年の取り方をしたいと思った。
「一応、食堂で案内は終わりだから…この後の事は、寮で同室になる子に任せようかな。」
携帯を取り出し、二言三言。
勇さんが携帯をしまう頃に、独特の機械音が鳴った。
『…呼びだしを行います。1-C 斎藤-サイトウ-君至急食堂二階まで集まって下さい。繰返します…』
響く放送、まだ授業中なはずなのに呼び出して大丈夫なのかと疑問に思う。
「本庄先生、斎藤君の残りの授業分出席でお願いしますね。」
「…了解。」
パラパラとバインダーの中身を見ながら言う誠一郎さん。
気だるそうなその姿だけ見るとホストそのもの。
「本庄先生、なんでそのスーツなんですか?」
「似合ってるだろ?」
「えぇ、とても」
「だからだ。」
疑問符が頭を占領する。
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