案内、遠慮します。

11/13

3515人が本棚に入れています
本棚に追加
/541ページ
静かに俺達を見ていた勇さんにも、一口分を差し出した。 「勇さんもどうぞ。」 笑みを浮かべ勧めてみたが、考えてみれば普通こんな事しないのかもしれない。 マスターと誠一郎さんがよく俺にするせいか毒された。 思わず、手を引こうとすれば勇さんが食べてくれた。 「美味しいね、有難う。」 魅力的な笑みを浮かべる勇さん、こんな年の取り方をしたいと思った。 「一応、食堂で案内は終わりだから…この後の事は、寮で同室になる子に任せようかな。」 携帯を取り出し、二言三言。 勇さんが携帯をしまう頃に、独特の機械音が鳴った。 『…呼びだしを行います。1-C 斎藤-サイトウ-君至急食堂二階まで集まって下さい。繰返します…』 響く放送、まだ授業中なはずなのに呼び出して大丈夫なのかと疑問に思う。 「本庄先生、斎藤君の残りの授業分出席でお願いしますね。」 「…了解。」 パラパラとバインダーの中身を見ながら言う誠一郎さん。 気だるそうなその姿だけ見るとホストそのもの。 「本庄先生、なんでそのスーツなんですか?」 「似合ってるだろ?」 「えぇ、とても」 「だからだ。」 疑問符が頭を占領する。
/541ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3515人が本棚に入れています
本棚に追加