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小屋に近寄るべく、鞄を抱え直せば門を挟んで向こう側から人が来るのが見えた。
(迎え?……って、あれは…。)
近寄ってくる人物に見覚えがあり、それでも顔には出さず彼が到着するのを待つ。
「おはようございます、転校生の藍住君でしょうか?」
絵に描いたような笑顔、所謂…嘘くさい作り笑顔を浮かべた彼は、俺にそう言った。
「はい、藍住であってます。」
その顔はやはり記憶の人物と重なる。
偶然にしては笑えない。
「僕は、副会長の青柳 志鶴-アオヤナギ シヅル-と言います。」
名前を聞いて、間違いなく本人だと確信した。
そんな事を考えながらでも、無表情のまま会話を進める。
それでも脳裏に浮かんでくる、こんな笑顔ではない彼の姿。
『アイさん、お手伝いしましょうか?』
俺は、ただのバイトで…彼は店に来る客の一人。
『アオさんはお客様ですよ?』
苦笑いで、断るのが恒例だったんだ。
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