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暗い室内に月明かりが、淡く射し込む。
その光に誘われるように、大理石の床がキラキラと光り、室内に置かれている豪華な調度品の数々も、微かな光りに導かれ輝きを増していく。
バルコニーへと続く、大きな窓の傍から少し離れた壁際に……一人の少女が冷たい床に左耳を下に体を丸めて横になっていた。
瞳は閉じられてはいるが、決して眠ってはいない。床に響いて来る音を聞き逃さまいと神経を集中している。
…………今日は来ない。お願い来ないで。
願いとは裏腹に、ふいに耳から聞こえる振動は、微かに、しかし確実に、こちらへと近づいている。
ゆっくりと開いた瞳からは感情は読み取れず、身体に走る痛みを我慢しながら、少女は身を起こす。
「っ……はぁ……」
指を1本動かすたび、起き上がるたびに全身に激痛が走り、座り込んだまま、この部屋で、ただ一つの扉を見つめた。
段々と近づいて来る足音を聞いていると、普段とは違う歩き方だと気づく。
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