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味方がいなくて、誰にも見向きもされない、助けてもくれない過酷な日々。
ただ、早くこの悪夢が過ぎ去るのを毎日祈っていた。それが今日で終わりを迎えるのだと少女は感じた。
「もっと早く助けに来るべきだった。ノエル……すまない」
ゆっくりと離れ、少女の顔を覗き見る。すると顔が強張り怒りを抑えるように、兄が自分の手を握り締めた。
まだ肌寒い中、少女が着ているのは、肩を出した露出度が多い薄い白い夜着。綺麗な栗色の髪は無残に肩まで切られ、鮮やかなルビーの髪飾りが異質に光る。
2年前は、透き通るような白い肌だった少女の身体には、見ているだけで痛々しい、殴られた痣や内出血が浮かび上がり、綺麗な顔も、色が変わるほど腫れあがり唇からも血が滲んでいた。
言葉を失っている兄の後ろから、青い目の男が近寄り、フワリと肩にマントをかけ、身体を包み込んでくれる。
虚ろな瞳で見ていると、その天使と視線が交差する。
『ありがとう』そう言いたかったのに少女は言葉が出ない。
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