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「早く妹姫を安全な所へ。まだ終わってはいない」
その青い瞳の天使の声は、頭に残るほど心地よく優しげだった。
「ああ、すまない。さあ、ノエル、もう大丈夫だ。立てるかい?」
兄は動揺しながらも、少女を支え立たせようと背中に手を添える。
すると、ジャラリと音が聞こえ、部屋中の視線が、その音を探す。
そして……視線はすべて、少女の足元へと集中した。
少女の左足には、足枷と繋がれた重く長い鎖。この部屋だけで生きる事を余儀なくされた苦痛の証。
「…………ノエル」
耐えていた兄の瞳から一筋の光りが零れた。
「ごめ……ん……ね。人質としての価値が、私には……なかったみたいなの。頑張ったん……だけど」
「何も言わなくて良い。お前が謝る必要はないんだよ。少し眠ると良い。次に目覚めたら悪夢は消えるから。安心しておやすみ」
息も絶え絶えに、苦しそうに謝る少女を遮り、兄が抱き上げる。
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