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いったい、この人は、今、何を考えているんだろう。
もういい加減、私といることに、うんざりしているのかもしれない。
そう思ったら、余計に気が重くなった。
ふと、空を見上げる。
夕焼け。
フロントガラスいっぱいに広がった夕焼けは、一枚のポストカードのような、映画のワンシーンのような優雅さをもっていた。
真っ赤で、でもやわらかなオレンジ色で、透けた雲がピンクに染まっている。
「ねぇ、止めて」
夕焼けを、もっとじっくり見たい。
そう思った瞬間に、口が勝手に動いていた。
そして意外なことに、龍平は黙って車をわき道に走らせ、防波堤のそばに寄せてくれた。
彼がエンジンを切るのも待たずに、私はドアを開けて、コンクリートの防波堤に向かった。
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