4人が本棚に入れています
本棚に追加
それぞれの生徒と教員が、ここに来る理由は様々であった
はみ出し者だからこそ
はみ出した者同志だからこそわかりあえる社会
作者もまた、はみ出し者だからこそ
この作品が生まれたのです
学校の資金の一部を横領した門脇
大麻所持、使用し懲戒免職を余儀なくされた須田先生
生徒との絆が巧く取れず、教壇を降りた斎藤先生
心理カウンセラーとしての自分の至らなさで生徒を自殺に追い込んだ宮川先生
教育方針の食い違いで学校を追われた吉田先生
それぞれが抱える闇
その闇の中でもがき、這い上がってきた人達だからこそ
生徒達に『今』を教える事が出来るのだ
「そうだ。西園寺ちゃん、夏休みの献立なんだけど…。」
「夏休みの献立? そういえばよくbarの頃、夏野菜使ってたな? この夏も季節の食材使うのか?」
「ピンポーン♪ でもね、いちいち買い物ってわけにはいかないと思うし。だから敷地使って畑を作ってみようかと思うのよ。どうかな?」
校舎の東側に位置する、荒れた土地があった
そこを耕し、畑として再利用しようというのだ
「成る程な。だが簡単に作れるか?」
「土はどんなに痩せていても、呼吸は今でもしている。何十年、何百年と歳月を経ていても、ね。」
口を挟んで助言を下したのは吉田先生だった
「吉田先生も、畑を耕した事あるんですか?」
「…ええ。私の畑も、痩せていましたから。」
「そうですよね。西園寺ちゃん、今から鍬借りてくるから!」
「おい、ちょっと待て!」
西園寺の呼び掛けにも答えず、颯爽と職員室を抜け出す門脇
「全く…。吉田先生は何を作ってたんですか?」
「いや、私は野菜ではなく…綿を作っていたんですよ?」
「綿? それは大層難しかったのでは?」
「やっと完成するまで8年もかかりました。」
西園寺は、吉田にお茶を淹れた
「頂きます。…うぅん、美味しい。知ってました? 茶の樹って、良質の土から作られた葉より、死にかけの土から作られた葉の方が美味しいという事を?」
「へぇ、そうなんですか? 俺にはどれも一緒だと思ってましたよ?」
二人で和みながら、時刻は11時半を廻っていた
「あー! 今日俺が当番だった。吉田先生、また話し聞かせてくださいね。」
急いで職員室を出た
最初のコメントを投稿しよう!