第1話:はみ出し者の学校

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それぞれの生徒と教員が、ここに来る理由は様々であった はみ出し者だからこそ はみ出した者同志だからこそわかりあえる社会 作者もまた、はみ出し者だからこそ この作品が生まれたのです 学校の資金の一部を横領した門脇 大麻所持、使用し懲戒免職を余儀なくされた須田先生 生徒との絆が巧く取れず、教壇を降りた斎藤先生 心理カウンセラーとしての自分の至らなさで生徒を自殺に追い込んだ宮川先生 教育方針の食い違いで学校を追われた吉田先生 それぞれが抱える闇 その闇の中でもがき、這い上がってきた人達だからこそ 生徒達に『今』を教える事が出来るのだ 「そうだ。西園寺ちゃん、夏休みの献立なんだけど…。」 「夏休みの献立? そういえばよくbarの頃、夏野菜使ってたな? この夏も季節の食材使うのか?」 「ピンポーン♪ でもね、いちいち買い物ってわけにはいかないと思うし。だから敷地使って畑を作ってみようかと思うのよ。どうかな?」 校舎の東側に位置する、荒れた土地があった そこを耕し、畑として再利用しようというのだ 「成る程な。だが簡単に作れるか?」 「土はどんなに痩せていても、呼吸は今でもしている。何十年、何百年と歳月を経ていても、ね。」 口を挟んで助言を下したのは吉田先生だった 「吉田先生も、畑を耕した事あるんですか?」 「…ええ。私の畑も、痩せていましたから。」 「そうですよね。西園寺ちゃん、今から鍬借りてくるから!」 「おい、ちょっと待て!」 西園寺の呼び掛けにも答えず、颯爽と職員室を抜け出す門脇 「全く…。吉田先生は何を作ってたんですか?」 「いや、私は野菜ではなく…綿を作っていたんですよ?」 「綿? それは大層難しかったのでは?」 「やっと完成するまで8年もかかりました。」 西園寺は、吉田にお茶を淹れた 「頂きます。…うぅん、美味しい。知ってました? 茶の樹って、良質の土から作られた葉より、死にかけの土から作られた葉の方が美味しいという事を?」 「へぇ、そうなんですか? 俺にはどれも一緒だと思ってましたよ?」 二人で和みながら、時刻は11時半を廻っていた 「あー! 今日俺が当番だった。吉田先生、また話し聞かせてくださいね。」 急いで職員室を出た
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