第2話:西園寺の夏休み(前編)

2/19
前へ
/159ページ
次へ
青空学級の夏休みから1週間が過ぎた 「西園寺先生、後は我々が遣っておきます。先生も休暇を取られてはどうですか?」 「お気遣いは有り難いですが、それじゃ先生方に申し訳ないですよ?」 「何を仰いますか。開校から今日に至る迄、休みを取らず働いたのは西園寺先生だけですよ? 私達は交替で休みを貰います。若いからといって油断は禁物ですよ。」 という事で、先生方の言葉に甘えて休みを取る事になった 翌日am6:25 「本当にすみません。何かあれば電話下さい。直ぐに駆け付けますので!」 「西園寺先生、お土産話待ってますよ。」 実は西園寺、里帰りの予定である 長年地方に赴任していた為、お墓参りも済ませていなかったのだ 「丁度良い機会です。墓を放っておくとバチが当たりますからね? 呉々も気を付けて。」 皆から見送られる中、何処か不安げな表情を浮かべていた am 8:05 東国際空港前 西園寺は電話を掛けていた 「もしもし、俺だ。」 「兄貴? 珍しい事もあるもんだね。」 「今から10:38分着の便があるから、それで帰る。」 「どうしたと急に? まさか教師に嫌気刺して帰ってくんだな?」 「阿呆か! 随分長い事帰ってなかったからな。墓参りの1つもせんとバチが当たるって釘刺されたからな。」 「ふーん。飯は?」 「それは適当に済ます。夜お袋連れて、何処か食べに行こうぜ?」 「分かった。只、午後からおかを病院連れてくから落ち合おう。」 「病院? 何処か具合でも悪いのか?」 「ん? おかん痛風患ってな。」 「はは、お袋らしいね。んじゃそっち着いたらまた連絡する。」 携帯の電源を切り、ロビーへと向かった 「と、お土産買っていくか。」 売店で適当な和菓子や箱ものを選んでいた 「そういや、こいつ食べたいって言ってたな。」 西園寺が選んだのは、東京名物「ひよこサブレ」 お土産も買い、チケットを受付に渡した 飛行機に乗るのは三年ぶりとなる 窓から顔を覗けば、雲が手に届きそうな感覚だった 到着迄間がある為、持参してきた本を読んだ
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加