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……浩介さんはきっと、お父さんに会いたくなった時にタバコを吸うんだ。
「……お父さんの思い出がタバコのにおいで、お母さんの思い出が、雑炊なんですね」
「そうなるね。 ていうか、他に覚えてることがないんだ。
色々なことを見たり話したりしていたはずなのに、居なくなった時に思い出したのが、たったのそれだけ。
親父といえばタバコ。 お袋といえば雑炊。 たったそれだけだ」
どこか寂しそうに笑いながら、浩介さんは天井を見つめる。
「もっと色々、父さんや母さんと話しとけばよかった」
……その声は震えていて、天井を見つめる瞳は潤んでいた。
浩介さんが、泣いている。
『涙』としてのものは出ていないけど、でも、天井を見つめる彼は、確かに泣いていた。
「……私も、会ってお話したかったです」
他にかける言葉が見つからず、私は私の思いを言うことにした。
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