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そして、私の家にやって来た。
浩介さんが私の鍵を持っていたけど、『大人の事情』というやつで、中に入るのは久しぶりだ。
家具はほとんどそのまま残っていて、久しぶりだというのに埃っぽさは全然ない。
「高村さんがアメリカへ行ったあと、俺が管理してる」
「あ、じゃあずっと掃除を?」
「うん。 その代わりに、2階の部屋を1つ借りてるんだ。
高村さんが作った資料を見たり、時々仮眠とったり、色々と便利だから。
これが『大人の事情』ってわけ」
そっか、だから私には鍵を渡せなかったんだ。
……でも、仕事で使ってるなら使ってるって、隠さずに話してくれればよかったのになぁ。
「浩介さん。 この家を利用してたこと、どうして今まで隠してたんですか?」
「良子さんに口止めされてたんだよ。 『帰る家があると、葉月はきっと一人で住むと言うはずだから』って。
そうなると、俺がここへ入ることも出来なくなるだろう?」
「……なるほど」
「とまぁ、最初はそうだったけど、今は俺と葉月ちゃんの関係が変わったから。
だから、話してもいいなって思った」
ニコッと笑った浩介さんは、私の髪を撫でたあとに階段を上り始めた。
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