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2階にある私の部屋を通り越して、その奥の、物置として使っていた部屋の扉を開ける。
「わぁ……」
――……そこはもう、『物置』なんかじゃなかった。
机が2つ並んでいて、1つにはパソコンが置いてあり、もう1つには難しそうな本や分厚いファイルが積んである。
そこから少し離れたところに、二人掛けのソファーと毛布。
うん、浩介さんの家の仕事部屋に似てる。
さすがに、テレビやDVDデッキはないけどね。
「この部屋を片付けていた時に偶然見つけたんだ。 でも、実は俺も中を見るのは初めてなんだよね。
だから、もしかしたら全然違う内容のものが入ってるかもしれない。 その時は、ごめんね」
そう言って、机の引き出しからディスクを取り出す。
そこには12年前の日付と、『浩介&葉月』とお父さんの字で書かれていた。
お父さん、ずっとこれを持ってたんだ……。
私、この家に住んでたのに、そんなディスクがあるなんて全然知らなかった。
「じゃ、家に戻ろうか。
あ、何か必要なものがあれば持って……って、もうすぐ葉月ちゃんはアメリカだね。
今更向こうに運んでも、仕方ないんだよな」
どこか寂しそうに笑いながら、引き出しを閉じる。
……私と浩介さんは、もうすぐ離れなくちゃいけないんだ。
今は一緒に居て手を繋ぐことが出来るけど、もうすぐ、出来なくなってしまうんだ……。
「……浩介さんと離れるのは、やっぱり寂しいし、ツラいです」
そう言って浩介さんの服の袖を掴んだ私に、浩介さんは優しく微笑むだけだった。
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