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時刻は午後3時。ちょうど、おやつの時間。
少し肌寒さを感じる春の景色と、暖かい、ポカポカした日差しの中、日傘を片手に私は1人歩いていた。
家から徒歩5分という距離に、私の行きつけのカフェはあった。
この街で一番の大通りにある、細道を通り、人影の少ない裏道にでると、すぐそこにある、知る人ぞ知るこ洒落た店だ。
木製で出来たドアに、ポスト。看板もすべて木製だ。
バッグから手鏡を出すと、髪型を整える。
そして、店のドアを開けた。
チャリン、と鈴の音がしたかと思うと、店の中から「いらっしゃいませ」と明るい声が聞こえてきた。
店長の小百合さんだ。
彼女は、私の顔を見ると、にこりと微笑んだ。
「あら、恵ちゃんじゃない」
「こんにちは、小百合さん」
小百合さんとは、もう1年の付き合いだ。
小百合さんはなにも言わずに、入れたてのココアとアップルパイを出してきてくれた。
ゆっくりと椅子に座ると、小百合さんが、気が付いたように話しかけてきた。
「ねぇねぇ、恵ちゃん!恵ちゃんって、アイドルとかってあんまり知らないよね?」
そう、雑誌を片手に小首を傾げる小百合さん。
……かわいいっ!
「そうですね、詳しくないです」
そう答えると、小百合さんは目を輝かせ、手に持っていた雑誌を見せてきた。
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