それは、甘いチョコの味

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雑誌には、きらびやかな衣装を着た男の人が写っていた。 「あの……この人達は?」 「彼等はドリーム☆ラヴァーズよ!」 ドンッとテーブルを叩く小百合さん。 幸い、この店には私と小百合さんしか居なかったので、迷惑にはならなかったようだ。 「今を駆けるトップアイドルなのよ!」 「は、はぁ……」 再び雑誌に目を向けてみる。 春をイメージしたのか、咲くはの花びらが背景に写っている。 それと他に、恋愛ドラマの特集コーナーや、新曲発売の予定など、こと細かく書かれていた。 確かに、小百合さんが、惚れる事はあるかもしれない。 アイドルの人達は皆、とても整った顔立ちをしており、私とは別次元の存在に思えた。 (私もこんな人達みたいになれたらなぁ) そんなことをポツリ、と思ってみる。 「あーあ、いいなぁ」 なんて、ことを言いながら、背もたれに深く腰かけていると、店のドアが乱暴に開いた。 ドアを開けたのは、黒いジャンパーのフードを深く被った男の人だった。まるで、テレビやドラマなんかで見る強盗犯みたい。 そんなことを思いながら男の人を見ていると、彼はこちらに向かって歩いてきた。 (え……) そして、私の隣の席に座った。 他にも空いている席があるのに、なんでここなんだろう? 男の人がコーヒーを頼むと、小百合さんは奥の部屋へと入って行った。 ……なんだか気まずいよ~。小百合さん早く帰って来てー。 そんな思いとは裏腹に、隣にいる男の人がフードを脱ぎ、こちらを向いてきた。 落ち着いた感じの茶髪に、白い肌、切れ長の瞳に整った鼻筋。まさに、美形だな、なんて思っちゃう。 「ちょっとお前、手伝え」 え……なに? いきなり向いたかと思えば、まさかの命令。 「な、なんですか!?それと、貴方は誰ですか?」 私はビックリしたあまり、声がどもってしまった。 恥ずかしい……。 私の言葉が意外だったのか、その人は驚きの表情を浮かべ、顔を近づけてきた。
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