呼ぶ女

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女は海に来ていた。 九月の海は秋の日差しを受け、女の前に拡がっている。 人影はなく、夏に誰かが忘れていったビーチボールが、ゆるやかな波の動きに身を任せ、ゆらゆらと揺れているだけだった。    女はそれを、ただじっと見つめる。 風が運ぶ潮の香りが、懐かしい記憶とともに女の胸をしめつけた。
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