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「あ、名前。わ、私、堀内です。堀内詩乃(シノ)っていいます」
堀内の話によると、歳も、専攻している学科も俺と同じらしい。
名前を聞いても、こんなのいたっけ?っていうのが第一印象だった。
マジか。
「バイだぞ……。しかも俺、ネコ……」
片手で目元を覆って、指の隙間から一点を見つめながらブツブツと自問する。
「猫、ですか? 好きなんですか?」
この状況で急に好きな動物の話なんてしないよ。
「えと、あの、宜しくお願いします。これから」
一生懸命、そう顔に書いてあるみたい。
ハァー、俺の中にいるオレが、頭を抱えて深いため息を吐く。
悪いけど、俺とアンタの間にセックスは存在しない。
キスも、セックスも、したくない。
「堀内さんは、それでいいの?」
「え」
口を結んで顔を赤らめる堀内を見て、俺は酷く同情した。
君に、俺に。
可哀想だな……この人。
俺なんか好きになっちゃって。
まぁどうせ、1、2ヶ月耐えれば向こうからふってくるか……。
「そんなの無くたって……い、一緒にいられるだけで嬉しいって、そう思える筈だから」
何度もどもりながら、堀内は言った。
そんなの、最初だけだって。
触れ合わないのなら、一緒にいる必要がどこにある。
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