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「急に雨、降ってきましたね」
「言っとくけど、仕方なしだから。アンタを家にあげんの」
雨粒のついた髪を払いながら淡々と隣に向かって言えば、堀内は何もかも受け入れるような優しい目をして頬に笑みを浮かべる。
堀内が俺の家に来るのは、この日が初めて。
大学に徒歩で通える距離にある、鉄筋コンクリート造の1DKのアパート。
俺はその2階に、1人で住んでいる。
「乾燥機入れるから、服、脱げるぶんだけ脱いで」
「え、いいよ。いいですいいです」
「そのままでいると部屋が濡れるだろ」
「あ……ですよね。じゃあ、お願いします」
堀内が脱ぐ間、俺は部屋から出て扉を閉めると、肌に張りついた服に手をかける。
脱ぎにくくなったパーカーに苦戦しながらキッチンの前を通ると、やっと脱ぎ終えたそれを雑に丸めて洗濯機に投げ入れた。
堀内に、代わりに着てろと服を渡すこともせず部屋を出てきた俺は、優しさの欠片も無い恋人だ。
別に俺はいい。
堀内の濡れた体を見たって、なんも興奮しないから。
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