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猫は、動くものには本能的に興味を示すが、こと飼い主に関しては、動かない人間を好むものだ。
始終動き回り、何をするかわからない人間の子供は、猫にとっては鬱陶しい存在である。
かずは、猫には好かれていた。
いつも読書に熱中して、読み終わるまでテコでも動かない子供だったからである。
すぐそばで、腹を出してくつろぐ猫たちにも気づかず、一心不乱に本を読む。
気ままな彼らとは、波長が合っていたのかもしれない。
対照的に、ひとつ違いの妹は、猫に触りたい、いじって遊びたい、という子供だった。
当然猫には煙たがられる。
冬の夜、生きた湯タンポを求めて、家族のタマ・ミミ争奪戦が始まる。
無理矢理布団に引きずり込み、色んなちょっかいを出しながら眠ろうとする妹。
「うにゃっ!」
辛抱たまらなくなったミミが、妹の布団を脱出し、かずの布団に潜り込む。
争奪戦にはいつも敗北するかずだが、待てば海路の日和あり、朝起きた時には、大抵ミミはかずの布団の中にいるのであった。
妹は不満顔を見せながらも、それでも毎日、争奪戦に参加し、勝利を収めてミミを引っ張り込み、朝気づけばフラれている、という生活を送っていた。
そしてある朝、悲劇は起こった。
早朝、朝ごはんの合図よりも先に、なぜかミミはごそごそとかずの布団を這い出した。
んー? ミミどこ行くの?
ミミの向かった先は、驚くなかれ、妹の布団。
かずは目を疑いつつも感心した。
おおミミ、お前にも情けというものがあったのか!
そうだそうだ、たまには妹と一緒に寝てやってくれ、朝ごはんまでもう少しの辛抱だからさ。
一抹の寂しさを感じながらも、ミミの行動に胸を打たれ、ミミが妹の布団に潜り込む記念すべき瞬間を見届けようと、かずは身体を起こした。
その瞬間。
ミミの取った行動は。
お尻を高く上げ、爪先立ちでプルプル……妹の布団の上で、まさかのトイレポーズ!!!!!
目を剥いた妹からミミが叩き出されたのは、言うまでもない。
そんな猫好きする性格のかずであるが、絶対に勝てないものがある。
祖母が猫用ごはんの器を、壁に打ち付ける音。食事の合図である。
どんなにかずのそばでくつろいでいても、一斉に起き上がり、潮が引くように走り去る。
飼い猫は現金なものだ。エサで豹変する。
豹。……やっぱり猫科である。
ま、これも日常。
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