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ここいらで、家主のかずの猫遍歴について触れておこう。
かずは現在一人暮らしで何も飼ってはいない。
郊外の一軒家、動物を飼うには最適とも言える環境にあるため、時には依頼も来る。
「ウチの猫が子供産んだんだけど、もらってくれない?
一軒家だったよね? かずんちって」
しかしその依頼は、大抵の場合、すぐに前言撤回される。
「あ、やっぱやめとく!!
アンタんちじゃ、猫ちゃん餓死しそう」
そう、自分の食事の面倒もロクに見られず、外食とカ🌕リーメイトに頼り、家には寝に帰るだけ。
家は開けっ放しでほとんど空き家状態にしている彼女に、動物が飼えるハズもないのである。
それが、野良猫パラダイスを生み出す主な原因なのであるが、ま、それはさておき。
彼女とて、動物は嫌いではない。むしろ好きだと言っていい。
ただし『好きで好きでたまらない』というような熱い思いがある訳ではない。
子供の頃から、ただ自然に、当たり前のように、色んな生き物たちはそこにいた。
呼吸をするように、生き物と触れ合ってきた経験が、かずの根底にはある。
家族と暮らし、かず宅にまだ生活の匂いが漂っていた頃。
かずはまだそれなりに普通の少女であった。
子猫や子犬を拾って来ては、
「ねえ~、絶対私が責任持って世話するから、飼って! 飼って!」
そしてお約束の三日坊主。
あとは祖母に任せっきりの、普通の少女であった。
自分の失敗を、猫になすりつけるのもいつものこと。
お正月の鏡餅のお飾りとなる、スルメと昆布。これが食べたくてしかたなかったかずは、餅の間から突出している部分を、毎日少しずつちぎっては、こっそり食っていた。
当然ある日気づかれる。
「あれっ!? スルメの足がなくなってる!!
昆布もえらく短くなってるな~?」
かずはそ知らぬ顔でうそぶいた。
「猫が食べたんでしょ!」
猫があんなにキレイにスルメの足だけ、昆布の先だけをちぎれる訳がない。
が、そこは子供の浅はかさ。
絶対バレバレだったはずだが、叱られた記憶はない。
けっこうおおらかな家族であった。
猫は代替わりしながら常時1~2匹はいた。
名前は、キジ柄のタマと、白黒のミミ。代替わりしてもずっとタマとミミ。
かずの家族はみな、けっこうズボラでもあった。
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