Ⅳ🐱野良ママの安息の地

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なぜ出て行かない!? 私が怖くないのか!? かずは考え、少々脅しをかけることにした。 皮手袋をはめ、意を決して押し入れに手を突っ込み、素早くまさぐる。 「ウニャーッ!!」 ママ猫の威嚇が攻撃に変わらぬことを祈りながら、手に触れた小さなカタマリを、一瞬取り出して、すぐに戻した。 チラッと見た子猫は、白かった。 さあ、『ここは危険』と、脅しはかけた。 私が今から仕事で留守にしている間に、頼むから出て行ってくれ! かずは祈りつつ出勤した。 その夜、帰宅したかずは押し入れに直行する。 「フーッッ!!」 ……まだおいでになった。 ガックリ肩を落とす、かず。 それでもいちるの望みをかけて、再度脅しを繰り返し、二日目の応接間での夜を過ごしたのである。 翌朝。 「フーッッ!!」 ……ここまで来れば明白である。 ママ猫に、出ていく気配は微塵もない。 かず宅の居住権はすでに、完全にママ猫に移行しようとしていた。 かずは覚悟を決めた。 フタ付きの丈夫な段ボール箱を探し出した。 長袖を重ね着し、皮手袋をはめ、タオルで目だけ残して顔をぐるぐる巻きにした。 少々ママ猫が暴れても大丈夫と思われる重装備である。 そしてかずは、野良猫親子の強制退去に踏み切った。 親子ともども、一気に箱に押し込み、箱ごと外に運び出す計画である。 まずは子猫からだ。 エイっと押し入れに手を突っ込む。 「ウニャーッッ!!」 ママ猫は、声こそ上げるが、攻撃して来ない。 手早く子猫を段ボールへ。キジ、キジ、白。3匹いる。 ママ猫を決死の思いで引っ張り出す。 拍子抜けするほどに抵抗しない。 押し入れの暗闇から姿を現した彼女は、赤い首輪をした、白猫だった。 ああ、元々は飼い猫だったんだな、お前さんは。 家の中が安全だと、人間は安全だと、そう思ってるんだな。 意外にも素直に強制退去に応じた彼女と子猫3匹。 情が移りそうなのを抑えつつ、とりあえず段ボールごと納屋にお連れして、かずは晴れて安心して出勤した。 その夜。 帰宅したかずの目に映ったのは。 再び押し入れから光る双眸!! そして子猫はキジ、キジ、白、もひとつ白。 ……いつの間にか4匹に増えていた。 おおーいっ!! どーゆーこっちゃ!! いいかげんにしろーっっ!! それ以来かずは、戸をきちんと閉めて出かけるようになった。 まあ、これもまた、日常。 ……って、んなワケあるかーっっ!!
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