Ⅰ🐱野良猫サロン

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……ガタンッ!! 寝室から怪しい物音が聞こえたような、気がした。 身構えるかず。 一瞬の静寂ののち。 ダダダダダダダダーーッ!! ドドドドドドドドーーッ!! 動転して家中を縦横無尽に走り回る野良ちゃん! たったひとつその子の知る『出口』は、今、かずが帰宅し扉を閉め、まだ靴も脱がずに唖然と立ち尽くす、玄関なのだ。 唖然としながらも、家主のかずはこの体験を楽しんでいた。 いや~、隣の伯母ちゃんから、 「アンタちゃんと玄関閉めて出かけなさいよ、野良猫がしょっちゅうアンタのベッドで寝てるよ」 と聞いてはいたが。 ほほ~、ついにご対面か。 なんて、悠長に構えていた。 もう~、野良ちゃんたら、そんなに慌てなくっても、何にもしないってばさ。 しかし目まぐるしく速いな~、捕まえて外に出してやりたいけど、無理だな、こりゃ。 ダダダダダダダダーーッ!! ドドドドドドドドーーッ!! ドンガラガッシャン、 ドッボーン!! ん? ドッボーン?? 野良ちゃんは、なんと水を張ったままの浴槽に飛び込んだ! かずもさすがに慌てる。 浴槽で溺死でもされたら、笑い話じゃ済まない。 突っ立ったままだった玄関から上がり、助け出そうと風呂場に近づいた、その時。 びちゃびちゃっ!! ガタッ!! ダダダダダダダダーーッ!! ドドドドドドドドーーッ!! 自力で浴槽から這い上がったその子は、ずぶ濡れで再び家の中を駆け回り始めた。 うおーい! とにかく早く脱出してくれ~。 再度開け放された玄関に気づいたその子は、かずの脇を脱兎のごとく、いや脱猫のごとく駆け抜けて、ようやく家外へ脱出した。 そして家主のかずには、水浸しになった真冬の我が家が残されたのだった。 これもまた、日常。 野良ちゃん、アンタも凍え死ぬなよ~💧
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