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どういうことかというと。
かずが深夜帰宅し、電気も点けずにベッドに直行、どっかり腰を下ろすと
「ふぎゃっ!!」
お尻の下から叫び声。
お尻に布団とは異なる感触の物体。
「おっと! 来てたのか、銀。
家主にお帰りの挨拶くらいせんかい!」
安眠を妨げられた彼はあからさまに迷惑げな顔を見せ、かずを無視して再びベッドを占領し眠りにつく。
天上天下唯我独尊である。
かずが寝転んでいると、平気でかずの顔を踏んづけて通る。
自宅の人間の場合には、大回りして避けて通るか、飛び越えるかしているのに、である。
「おいコラ、踏むならせめて顔以外にせんかい!! 顔以外に!!」
かずは何度銀に突っ込んだかわからない。
しかし無視である。
つまり彼にとってかずは、お気に入りの別宅に時折出没する、単なる物体のひとつにすぎないのだ。
彼の前ではかずに人権など存在しない。
そんな彼が、唯一かずを必要とする時。
それが、冬の夜である。
彼はかずに、ベッドの掛け布団の下にある、適度に暖かい座布団、もしくは湯タンポとしての用途を期待しているのだ。
洋猫は毛が深くて寒さに強い。日本猫と違って、コタツの中や布団の中にはめったに入ろうとしない。
暖かい座布団で充分なのだ。
しかしかずとしては、彼が布団の中に潜り込んできて、脇の辺りで丸くなってくれるのがベストである。
自分も暖かいし。腕枕だってしてやるぞ。
布団の中が無理なら、せめて身体の上以外で寝てくれ。
布団の上に居座られると、それが身体の上でなくても身動きはちょっと窮屈になる。
それでも身体に乗られて金縛り状態になるよりはよっぽどマシだから。
「重い……銀、さあどいてもらおうか」
そして今日も、真夜中の静かなる攻防戦が始まる。
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