三つの月

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 暗く広い部屋の中に一人の少年が倒れている。年は高校生くらいであろうか。  まだ大人になる途中の幼さの残る顔立ちに黒くて爽やかというよりは当たり障りのない短髪。    背格好もまさに平均的といった感じの彼は意識を取り戻すとゆっくりと起き上がり、状況を確認する為に辺りを見回す。  周囲には沢山の本棚とぎっしり詰まった数々の本、少し離れた位置には4人掛けの椅子とテーブルが何個か設置されている。  窓から差し込む月明かりが与えてくれた情報はその程度だった。 (ここは....図書館? それにしては規模が小さいな....学校の図書室......か?)  そう気付いた少年はふと、自分の格好を見た。  学校指定の制服を着用しているが、上履きではなく外履きを履いている。  ポケットをまさぐってみるが財布は無く、かろうじて左のポケットに携帯電話が入っているだけであった。 (なんで俺は夜の学校にいるんだ? これは..夢か? 夢にしてはリアル過ぎる)  念のためほっぺをつねったり、その場でジャンプしてみるが痛みも足裏から伝わってくる感触も現実そのものだった。 (俺は確か自分の部屋で携帯をいじってて、それから......あのアプリだ! あれを起動して、最初に名前を入力して......アレ? 俺の名前は何だ?)
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